染飯、おこわ、七色汁─晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2022年06月02日

聞き書 静岡食事 中山間(岡部)の食より


六月五日は月おくれの端午の節句で、染飯をつくる。染飯は、もち米に一度ゆでて煮汁をすてた黒豆を入れて蒸し、くちなしの実で山吹色に染めたものである。『東海道名所図会』(秋里籬島編、寛政九年=一七九七)にも、「瀬戸の染飯」と書かれており、古くからつくられている晴れの日のごちそうである。
この日はしょうぶ湯をわかす。女が鉢巻をしてこの風呂に入り、鉢巻をしたまま寝ると、頭痛を病まないといわれている。
このころは田植えの準備、田植えと、二番茶までに終わらせなくてはならない作業が続く。
六月の終わりまでに、田植えをすませ、植えあげ(さなぶり)をする。植えあげには、おこわや五目飯を炊き、おぼたをつくって、ねぎらいをする。

写真:染飯(左)とかしわもち

 

出典:大石貞男 他編. 日本の食生活全集 22巻『聞き書 静岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.144-145

 

関連書籍詳細

日本の食生活全集22『聞き書 静岡の食事』

大石貞男 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540860638
発行日:1986/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

静岡県は日本の食文化上、特異な位置を占める。大井川を境に県内の食文化が二分され、それが日本の東西の食文化の違いにほぼ重なる。民俗学上も貴重な静岡の食事の全貌。
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