聞き書 静岡の食事 中山間(岡部)の食より
六月五日は月おくれの端午の節句で、染飯をつくる。染飯は、もち米に一度ゆでて煮汁をすてた黒豆を入れて蒸し、くちなしの実で山吹色に染めたものである。『東海道名所図会』(秋里籬島編、寛政九年=一七九七)にも、「瀬戸の染飯」と書かれており、古くからつくられている晴れの日のごちそうである。
この日はしょうぶ湯をわかす。女が鉢巻をしてこの風呂に入り、鉢巻をしたまま寝ると、頭痛を病まないといわれている。
このころは田植えの準備、田植えと、二番茶までに終わらせなくてはならない作業が続く。
六月の終わりまでに、田植えをすませ、植えあげ(さなぶり)をする。植えあげには、おこわや五目飯を炊き、おぼたをつくって、ねぎらいをする。
写真:染飯(左)とかしわもち
出典:大石貞男 他編. 日本の食生活全集 22巻『聞き書 静岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.144-145