梅干し

連載日本の食生活全集

2022年06月03日

聞き書 静岡食事 中遠水田地帯の食より


小野田家では梅の木を二本、屋敷に植えているから、三升は十分に漬けられる。赤しそも、一年分、間に合うよう準備しておく。
梅干しにする梅は、田植え前、黄色くならないうちにとる。とった梅は水洗いしてから桶に入れ、一昼夜水につけてあく抜きをする。かめに梅を入れ、塩をふりながら漬けて、上にふたをして重石をのせ、二、三週間おく。梅一升に対し、塩は三~三合半である。
梅が漬かったころをみはからって赤しその葉四〇匁くらいをとり、塩もみして青汁をすててから、漬けた梅酢で赤しそをもみ出すと赤い梅酢にかわる。梅と赤しそ、梅酢をかめに入れ、ふたを開けて、二、三日、日にあてておくときれいな色に染まる。
土用の晴れた日の続くころ、梅と赤しそをとり出し、簀の上に並べて一週間くらい雨にあてないように日に干す。雨が降らなければ夜も外に置いたほうがよい。梅にしわがよるていどになったら本漬けする。
本漬けは、梅と一緒に干しておいた赤しそを梅の上に広げ、梅酢をひたひたになるほど入れ、そのままおく。

 

出典:大石貞男 他編. 日本の食生活全集 22巻『聞き書 静岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.232-233

 

関連書籍詳細

日本の食生活全集22『聞き書 静岡の食事』

大石貞男 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540860638
発行日:1986/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

静岡県は日本の食文化上、特異な位置を占める。大井川を境に県内の食文化が二分され、それが日本の東西の食文化の違いにほぼ重なる。民俗学上も貴重な静岡の食事の全貌。
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