食卓をにぎわすあげまきと島うり―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年08月09日

聞き書 長崎食事 諌早・西東彼杵の食より

夏の田の手入れは苦しい仕事である。朝の涼しいうちでなく、暑くなってから田に入り草取りをする。こうすれば、温かい水が底まで入り、稲の育ちがよいからだ。三番草までとる。また、田の面に油をさして虫追もする。稲の葉で目を突いたり、ひるにたかられたりする。水車を踏んで掘割から田に水をかける仕事もある。足に力のいる仕事である。暑い盛りの土用時分は昼休みを少し長くとって日中(休養)する。主婦はその間に赤ん坊に乳をふくませたり、洗濯をしたり、ゆっくりとは休めない。こんなに暑くて苦労な仕事も秋の実りにつながるので辛抱する。
このころになると、干潟では、あげまきがたくさんとれる。島(干拓地の畑)でとれる島うりもおいしい。干拓地に含まれている塩の加減なのであろうか。

ぶなぞうめんにすることが多い。煮干しや塩くじらをだしにして、汁を多めにぶな(かぼちゃ)を煮つけ、中にそうめんを入れる。ぶなの甘みと、そうめんの塩気がよく合って食べやすい。このころ、高菜漬やたくあんが古くなって、においが出てくるが、これを油炒めにして出すと、みんな喜んで食べる。中よけには島のまくわうりをよく食べる。井戸に冷やしたものは格別おいしい。

写真:夏の昼食
上:〔左から〕うりの塩漬、高菜の油炒め/下:〔左から〕麦飯、ぶなぞうめん

 

出典:月川雅夫 他編. 日本の食生活全集 42巻『聞き書 長崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.25-26

 

関連書籍詳細

日本の食生活全集42『聞き書 長崎の食事』

月川雅夫 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540850011
発行日:1985/4
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5判上製 378頁

海岸線が全国で一番長い県・長崎。離島が群れなす長崎。中国と南蛮の影響。さつまいもの料理が一番発達している長崎。さまざまな長崎のさまざまな料理の全貌を紹介する。
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