焼いたさえらに、みかんをしぼる―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年09月16日

聞き書 和歌山の食事 熊野灘の食より

夕―焼いたさえら、野菜のごった煮、菜飯
秋も深まると、浦はえび網、さえら網、いか釣り、むつ、よらり(くろしびかます)、たちうおなどの夜釣り、大敷と忙しい。
麦はもう買わねばならないが、欠きいもを入れて麦ごはんを炊く。ときには、麦ごはんに大根のすぐり菜を混ぜこんで、菜飯にして食べることもある。
屋敷まわりの菜園では、大根、ねぶか、しゃくしななどの野菜が青々としげり、夕飯のおかずには、焼き魚のだしで野菜のごった煮をよくつくる。
秋のはじめに、棒受網にあじがたくさんのるので、煮つけにしたり、焼いたりしてよく食べるが、秋も深まると、いよいよさえら漁がはじまり、焼いたさえらがたびたび食卓にのぼるようになる。焼きたてのさえらには、みかんの汁をかけて食べる。
夕飯がすむと、「風呂よんでよ」とおたがいに近所でもらい風呂をする。

写真:秋の夕飯
上:すじなの煮もの(焼きさえらのだしで煮る)、大根の三杯酢漬/下:菜飯、あじの煮つけ

 

出典:安藤精一 他編. 日本の食生活全集 30巻『聞き書 和歌山の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.242-244

 

関連書籍詳細

日本の食生活全集30『聞き書 和歌山の食事』

安藤精一 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540880582
発行日:1989/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5判上製 380頁

かつおの一本釣り漁で活気づく田辺湾、黒潮に乗ってくるまぐろ、鯨などが食卓をにぎわす熊野灘、ことあるごとにもちを搗き、すしをつくる紀ノ川流域など紀州の食の全貌。
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