聞き書 奈良の食事 奥宇陀の食より
■山弁当――麦はん、炊いたにしん、みそのこ、こうこ
炭焼きは、本格的に窯を休めるのは五月と秋だけである。春や夏は炭焼きのほか山の下草刈りなどもあり、女も草刈りや炭を負いねだすのに弁当を持って山へ行く。「山田のめんぱ」のふたと身にぎっしり詰めた麦はんには、みそのこの味噌の味がしみこんでいる。力をつけるため、干しにしんを甘からく炊いたもんもおかずに持っていく。きつい山仕事には、塩気の多いものが好まれる。
写真:春の山弁当
伊勢の山田で買っためんぱに麦はんを詰めて、みそこやこうこ、炊いたにしんをのせる。
出典:藤本幸平 他編. 日本の食生活全集 29巻『聞き書 奈良の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.178-179