聞き書 宮城の食事 仙北・大崎耕土の食より
■初田植え
五月よいこで初田植えの日には、おふかしをつくってお田の神さまにお神酒とともにお供えする。田の水口にもお神酒をたらして拝む。
田植えの弁当はそれぞれ持ち寄りで、午前と午後のたばこは、よいこ当番の家で用意をする。午前三時には起きて、朝ごはんの用意をする人、苗代から苗をあげる人と分かれての忙しい一日がはじまる。嫁ごは弁当とたばこの用意をする。
たばこのおふかしは、手伝い人の数だけにぎって焼ぎ飯(にぎり飯)にする。二〇個から三〇個はにぎる。そのほか田植えには、にしんとたけのこの味噌煮は欠かせない。一日に二回のたばこには、味噌焼ぎ飯もつくるし、ごま塩や豆粉をつけた焼ぎ飯も用意する。青ばた豆のうるかし豆、切りこもちの揚げたもの、炒り豆、炒り米、おごご、それにどぶ、甘酒など、御用かごに詰めて背負うと、五貫目以上にもなる。そして早朝六時には田んぼでの作業開始となる。
小山家の田は東北本線沿いにあり、九時一分の上り列車の汽笛が聞こえてくると「はかつきしだい(一段落したら)、たばこにすんべ」ということになる。一一時三〇分の汽車が通ると、昼飯になる。夕飯の膳につくのは午後八時すぎになる。そして、明日もきつい作業が続く。
写真:田植えのたばこ
〔左から時計回りに〕うるかし豆、切りこもちのから揚げと炒り米、にしんとたけのこの味噌煮、たくあんときゅうりのもち漬、甘酒、おふかしの焼ぎ飯
出典:竹内利美 他編. 日本の食生活全集 4巻『聞き書 宮城の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.26-28