聞き書 千葉の食事 東京湾奥の食より
■釣り客の朝飯――白まんま、あさりのおつけ、生卵、焼きのり、ぬか漬
釣り客が来るのは平日が多く、客はほとんどごろ寝で朝を待ち、なかには眠らずに夜をすごす人もいる。
夜明けの三時、あたりはまだまっ暗だが、泊まりこんでいる客を起こし、朝飯を食べさせる。のりは、干しのりを焼いて切り、てしょ(小皿)にのせて出す。おつけの実は、たいがいあさりと決まっている。
かたわらで、船に積みこむ弁当をこしらえる。まず、おはちに白米のまんまをしっかりと入れる。お茶箱の中半分に客の茶わんとわんこ(汁わん)、はしを入れ、菜ものは塩鮭か塩ますの切身、あじの干もののいずれかに、きゅうりやなすのぬか漬と、味噌や醤油を添える。船の上は日陰がないので塩気のきいたおかずがよい。お茶箱のあとの半分には、細かくおっかいた炭と焚きつけ(細く割った木切れや古新聞など)と火ばさみを入れ、ふたをする。
水樽とやかん、なべ、汁の実用のあさり、小さなブリキの缶に入れたお茶っ葉などは、ひとまとめにして、船の艫のほうの日の当たらない場所に積む。客の注文で、すいかを積むこともある。
写真:釣り客に持たせる弁当
おはちの中:白米のまんま/お茶箱の中:右に塩鮭、なすときゅうりのぬか漬、茶わん、左に燃し木、炭/なべの中:味噌、やかんと七輪、枕箱も忘れないよう持っていく。
出典:高橋在久 他編. 日本の食生活全集 12巻『聞き書 千葉の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.154-155