聞き書 秋田の食事 県央八郎潟の食より
田植え後は、畑仕事にかかる。ごといもの土寄せ、えんどうの手(支柱)立て、かぶ、きゅうりの手入れなど、細かい畑仕事が続く。これらは女の仕事である。つくる野菜はおもに家で食べるものであるが、かぶやきゅうりは、近くの一日市の朝市に売りに行く。
売った代金は、おかず代にし、まぐろの頭やすじこを買う。まぐろの頭は一つ五銭で買い、押切りで小さく切り、醤油で煮つけて食べる。
男たちは、朝食前の朝仕事は草刈り、午前中は焚きものにする柴刈りに高岡山に出かけ、昼前に三把とって積み上げると終わりにする。午後からは、わらじをつくってほまち(小遣い銭)をつくる。
暑い盛り、田の草取りは大変な仕事であるが、やがて来るお盆休みや盆踊りなどを楽しみにしながら、泥田の中をかきまわして、草を泥の中に押しこむ。
このころの食事は、朝は二番米のごはんに、よさく豆(えんどう豆)の味噌汁、いそがき(はまあざみ)のおひたしと大根おろし、梅漬、きゅうり漬などである。
昼はごはんと、なすとみず、きゅうりに塩くじらを入れた貝焼き、きゅうりの薄切りと、しその葉を細く切って冷たい味噌汁に浮かべた冷やおつけ、なす漬などである。
夕方は、ごはん、ごといもの味噌汁、ごり蒸し、なす漬などである。
写真:夏の昼食
膳内:〔上〕貝焼き(なす、みず、きゅうり、塩くじら、えびの塩辛で味つけする)、〔下〕ごはん、冷や汁(きゅうり、しその葉、味噌)/膳外:なす漬
出典:藤田秀司 他編. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.71-72