刺身ときゅうり、のど越しのよいそうめん――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年06月20日

聞き書 山口の食事 城下町萩の食より

夏の麦ごはんはすえやすいので、白米のごはんを炊く。夕食に一日分をまとめて炊くことに変わりはない。ごはんは、夕食が終わるとかごにふきんを敷いて移し、涼しい井戸端へつるしておく。
夕――そうめん、なんきんの煮もの、煮豆、漬物
この時期はもうもちがないので、ごはんが足りないときはそうめんにする。たいのあらでだしをとってにゅうめんにしたり、冷やしそうめんにする。畑のしそやひともじ、みつば、ゆずきちなどを薬味にすると、にゅうめんや冷やしそうめんの味を引きたて、のど越しをいっそうよくする。そうめんは、乾物屋から一箱単位で買っておく。
なんきんの煮ものやなすびのでんがく、なすびのあら煮、きゅうりなますをよくこしらえる。きゅうりは、八百屋や行商人からもたくさん買って、塩もみにしたり、刺身のつまにしたりする。きゅうりなますにあじの焼き身を入れると上等のなますになり、ごちそうである。
あじやいさきの刺身や塩焼き、いかやたこの刺身に酢のもの、煮つけ、こちの刺身や煮つけ、きすの刺身とてんぷら、しじみの味噌汁、豆腐とあらのおつゆなど、豊富な海の幸に恵まれて、夏の食事は昼も夕もにぎやかである。

写真:夏の夕食
にゅうめん、なんきんの煮もの、黒豆の甘煮、らっきょうとどぶ漬(きゅうり、なす)

 

出典:中山清次 他. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.290-292

関連書籍詳細

日本の食生活全集35『聞き書 山口の食事』

中山清次 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540890017
発行日:1989/4
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 382頁

日本海、響灘、周防灘の三つの海に囲まれる山口県は、西日本の陸海交通の要衝。維新以来、歴史を動かしてきた地の人々の暮らしの呼吸と食べものを伝える。
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