聞き書 山口の食事 城下町萩の食より
夏の麦ごはんはすえやすいので、白米のごはんを炊く。夕食に一日分をまとめて炊くことに変わりはない。ごはんは、夕食が終わるとかごにふきんを敷いて移し、涼しい井戸端へつるしておく。
■夕――そうめん、なんきんの煮もの、煮豆、漬物
この時期はもうもちがないので、ごはんが足りないときはそうめんにする。たいのあらでだしをとってにゅうめんにしたり、冷やしそうめんにする。畑のしそやひともじ、みつば、ゆずきちなどを薬味にすると、にゅうめんや冷やしそうめんの味を引きたて、のど越しをいっそうよくする。そうめんは、乾物屋から一箱単位で買っておく。
なんきんの煮ものやなすびのでんがく、なすびのあら煮、きゅうりなますをよくこしらえる。きゅうりは、八百屋や行商人からもたくさん買って、塩もみにしたり、刺身のつまにしたりする。きゅうりなますにあじの焼き身を入れると上等のなますになり、ごちそうである。
あじやいさきの刺身や塩焼き、いかやたこの刺身に酢のもの、煮つけ、こちの刺身や煮つけ、きすの刺身とてんぷら、しじみの味噌汁、豆腐とあらのおつゆなど、豊富な海の幸に恵まれて、夏の食事は昼も夕もにぎやかである。
写真:夏の夕食
にゅうめん、なんきんの煮もの、黒豆の甘煮、らっきょうとどぶ漬(きゅうり、なす)
出典:中山清次 他編. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.290-292