聞き書 奈良の食事 十津川郷の食より
■昼飯――麦飯、かぼちゃ汁、ちしゃ菜の酢味噌、うりやなすびの漬物
田畑では、真夏の日ざしとせみの鳴き声だけが頭上から降り注ぐ。二番草取りともなれば稲の丈も伸びて、かがんだ顔や首をはしかい(ちくちくする)稲がつつき、流れ落ちる汗と一緒になって目にしみる。「ねえよお、飯じゃぜー(ごはんだよ)」と、はるか上の庭先から呼ばれて腰をのばすと、昼どきである。
姑ばあさんが米の節約を考えてつくったかぼちゃ汁は、汁の中の小麦粉だんごにかぼちゃの甘みが移って食べよい。さつまいもがとれるまでかぼちゃを食べることが多い。
また熱い麦飯にちしゃ菜の酢味噌を添えると、疲れていても食べよいもんである。
写真:夏の昼飯
上:ちしゃ菜の酢味噌、うりとなすびの塩漬/下:麦飯、かぼちゃ汁
出典:藤本幸平 他編. 日本の食生活全集 29巻『聞き書 奈良の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.264-266