家々自慢のなご炒り、漬物、いも子汁――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年09月12日

聞き書 山形食事 村山盆地の食より

夕――麦飯、いも子汁、さんま焼き、菊のひたし、漬物
一日精いっぱい働くので、夕食が楽しみである。農繁期中はなにかしら生ぐさものがつき、塩引き(塩鮭の切身)がよく出る。
菊は、黄菊と朱色の花の二種類で、菊散らし(花弁をむしること)をしてさっとゆで、ひたしにして食べるのが最も多い。そのほろ苦さと甘さと、さきさきした歯ざわりは、秋の日常のおかずの代表である。
秋はまた里芋のおいしい季節で、いろいろに利用される。いも子汁もその一つである。いも子汁といっても、朝のおづけとは違って、肉入りのいも子汁である。沢尻家では、鶏五〇羽を飼っている。その廃鶏を利用して、いも子、鶏肉のほかに、こんにゃく、ねぎなどを入れ、大きいなべに煮る。これは汁でもあり、煮ものでもあり、おかずでもある。いも子汁をつくったときは、ほかに漬物があれば十分といえる。

写真:秋の夕食
上:青菜漬/下:麦飯、いも子汁(里芋、鶏肉、こんにゃく、ねぎ)

 

出典:木村正太郎 他編. 日本の食生活全集 6巻『聞き書 山形の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.30-32

関連書籍詳細

日本の食生活全集6『聞き書 山形の食事』

木村正太郎 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540880445
発行日:1988/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

山形の「母なる川」最上川が結ぶ置賜盆地、村山の平野と山間、県北の最上、庄内平野。暮らしの柱にある米と結びついた山と海の幸のすべてを紹介。加えて、羽黒山修験道の食、酒田海船問屋の食を再現。
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