聞き書 山形の食事 村山盆地の食より
■夕――麦飯、いも子汁、さんま焼き、菊のひたし、漬物
一日精いっぱい働くので、夕食が楽しみである。農繁期中はなにかしら生ぐさものがつき、塩引き(塩鮭の切身)がよく出る。
菊は、黄菊と朱色の花の二種類で、菊散らし(花弁をむしること)をしてさっとゆで、ひたしにして食べるのが最も多い。そのほろ苦さと甘さと、さきさきした歯ざわりは、秋の日常のおかずの代表である。
秋はまた里芋のおいしい季節で、いろいろに利用される。いも子汁もその一つである。いも子汁といっても、朝のおづけとは違って、肉入りのいも子汁である。沢尻家では、鶏五〇羽を飼っている。その廃鶏を利用して、いも子、鶏肉のほかに、こんにゃく、ねぎなどを入れ、大きいなべに煮る。これは汁でもあり、煮ものでもあり、おかずでもある。いも子汁をつくったときは、ほかに漬物があれば十分といえる。
写真:秋の夕食
上:青菜漬/下:麦飯、いも子汁(里芋、鶏肉、こんにゃく、ねぎ)
出典:木村正太郎 他編. 日本の食生活全集 6巻『聞き書 山形の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.30-32