柿が運ぶ秋の味覚――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年10月10日

聞き書 鹿児島食事 鹿児島市(商家)の食より

秋の深まりにつれて、果物屋の店頭にはみかん、柿、うんべ(むべ)などが並んで、秋の味覚が味わえるようになる。春田家では家族みんな柿が好物で、近郊の伊敷や吉野から振り売りが来るといっぱい買って、渋抜きしたり、つるし柿にしたりして朝夕よく食べる。もいや柿の渋抜きしたのは、いちだんとおいしい。柿は家の庭からもとれる。
夜――からいも入り麦ごはん、きすのお澄まし、豚骨、にがごいの炒め
きすは身がきれいで、家族みんなの好物である。三枚に開き、念入りに小骨までとった身に、かたくり粉をつけて汁の実にし、みつばをあしらう。
豚骨は豚のあばら骨を二時間くらい煮て、味噌、地酒、砂糖、しょうがを入れ、さらに一時間くらいことこと煮こむので、やわらかく煮ふくまっておいしい。その汁を別にとり、こんにゃく、大根、里芋などを煮こみ、つけ合わせとする。
別に、にがごいの炒めをつくり、漬物は酢らっきょうを添える。

写真:秋の夕食
〔左から時計回りに〕十六寸豆の甘煮、にがごいの炒め、豚骨(大根、里芋入り)、きすのお澄まし、からいも入り麦ごはん。中央は酢らっきょう

 

出典:岡正 他編. 日本の食生活全集 46巻『聞き書 鹿児島の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.29-30

関連書籍詳細

日本の食生活全集46『聞き書 鹿児島の食事』

岡正 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540890055
発行日:1989/12
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

鹿児島は南方食文化の北端。いも・鶏・糸瓜・豚の調理に南方の食習慣が息づく。海上の味=ヤポネシア構想の主舞台の陽光あふれる南国の味。
田舎の本屋で購入

このカテゴリーの記事 - 日本の食生活全集
おすすめの記事