聞き書 滋賀の食事 琵琶湖沖島の食より
■おとりこし
秋の報恩講のことである。十一月、菊の花が咲くころ、お互いに各家の仏壇におまいりする。島の約半数が親せきとなるので、二つの寺に分かれて、ほぼ一か月くらいかけて毎日のように各家の仏壇におまいりし、親鸞さまのお徳をしのび、仏さまのご恩に感謝する。
これは年寄りの楽しみで、夕食の後であるため、お茶の子としてかぼちゃがないと、おとりこしがすまないようにいわれる。かぼちゃの煮もの、そらまめの煮もの、うずらまめの煮もの、こいもと油揚げ入りの大根炊き、塩押しなすびの煮ものなど三品ほど出し、食べながら話に花が咲くという毎日である。
写真:おとりこしのお茶の子
上:塩押しなすびの煮もの、うずらまめの煮もの/下:かぼちゃの煮もの、大根炊き(こいも、油揚げ入り)
出典:橋本鉄男 他編. 日本の食生活全集 25巻『聞き書 滋賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.36-38