聞き書 静岡の食事 県北山間(水窪)の食より
■朝めし――麦飯、大根の味噌汁、たくあん
屋敷まわりをなにくれとなく世話をして、一〇時ごろにとる朝めしは、麦飯と大根の味噌汁、それにたくあんを添える。
日中の男女共通の仕事は薪とりである。冬場には薪が一か月につき一間間必要といわれる。一本の長さ二尺五寸の薪を、縦、横、高さともに一間分積み上げた量である。背板につけて山から運び下ろしては、蔵の脇に積んだり、屋内の薪部屋に入れこむ。
また、男たちにとっては、材木の山出しの日傭とりに出て現金を稼ぐ季節でもある。広大な山林資源を求めて入ってくる業者のもとで多くの人夫をまとめる人が庄屋と呼ばれ、その下で伐採にあたる専門職を杣、切り倒した材木を搬出する人夫を日傭と呼ぶ。斜面が急すぎて木馬道をつくることもできないので、ほとんどが「すら出し」といって、材木を地面に樋のように長く並べた上を一本ずつすべらせて川まで下ろす。そこから、ばらのままの材木を、いかだに組まずに水流を利用して川下げすることを、川狩りと呼ぶ。
写真:冬の朝めし
麦飯、味噌汁(大根、にんじん、しいたけ、こんぶ)、たくあん
出典:大石貞男 他編. 日本の食生活全集 22巻『聞き書 静岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.244-247