麦踏みのあとの楽しみは、芯から温まるだご汁と一杯の酒──日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年12月11日

聞き書 佐賀食事 佐賀平野(クリーク地帯)の食より

夜――実だくさんのだご汁、ふなと大根の煮つけ、大根葉のおよごし
寒い夜は、だご(だんご)汁が一番からだが温まってよい。あつあつのだご汁をふうふういって食べるのは、なんともうまい。だご汁の実は、にんじん、里芋、ねぎ、大根など実だくさんにして、ときには小豆を少し入れて煮る。野菜が煮えたら、メリケン粉を練っただごを手でつん切って入れ、味噌味にしたり醤油味にしたり、そのときどきによって味を変えて食べる。
また、焼きふなご(小ぶなの焼干し)の煮つけを酒のつまみにして、熱めの燗をつけた酒を一杯飲むとからだも温まり、昼間の寒い田んぼの疲れも吹きとんでしまう。ふなと大根を一緒に煮つけたものや、いもの子(里芋)の味噌煮や、大根葉のおよごし(ごまあえ)なども夕飯のおかずにつくる。
夜の食事もすみ一息つくと、土間で男も女も夜なべをする。男はわら細工の副業に、女は家族みんなの繕いものやつぎあて、編みものや縫いものに精を出す。それが終わると女も縄なえ機械で縄づくりやかまぎ織りに励む。夜なべ仕事で腹もへってくると、焚き火で焼いたとういもなどを食べ、お茶を飲み、ひととき手を休めてほっと息をつく。火鉢で手を温めながらのわら仕事は冬の間の日課で、三月末ごろまで続く。

写真:冬の夕飯
だご汁、ふなと大根の煮つけ、大根葉のおよごし

 

出典:原田角郎 他編. 日本の食生活全集 41巻『聞き書 佐賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.17-20

関連書籍詳細

日本の食生活全集41『聞き書 佐賀の食事』

原田角郎 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540910043
発行日:1991/11
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

稲作と茶と磁器発祥の地佐賀は、クリーク農業の地。佐賀平野の米とクリークの魚が食の基本。玄界灘と有明海という二つの海からは対馬暖流と干潟の恵みが四季の食膳をにぎわす。
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