聞き書 宮崎の食事 日南の食より
■夜――いも飯、びるの味噌おつけ、ぶりの刺身、ふだんそうのしめもん
からいものある八月十五夜から四月(以下すべて旧暦)までは、飯はいつもいも飯で、夜に一日分を一度に炊く。大釜の底に切ったいもを入れ、その上に米をのせて炊く。炊きあがったとき、一番上の米の多いところが翌日の漁の弁当用、続いて朝、昼用で、一番下がその日の晩飯用である。弁当用、朝飯用、昼飯用は別々の木のおひつにきっちり詰めておく。
夜食べるいも飯は、釜の底のいもが一番多いところで、いもと飯を混ぜて、いもが主体のからいももちのようにして食べる。
夜は味噌おつけを必ず炊く。時(季節)の魚のはねもん(売りものにならない傷もの)を入れた汁が多い。冬は赤むんの漁なので、びる(あまだい)の味噌おつけが多い。魚によって料理も違うが、冬はからだの温まる汁もんが多い。
夜、飯の少ないときは、だご汁(だんご汁)やそば汁などの汁もんをつくる。
おかずは、はねもんのぶりの刺身にしめもん(炒り煮)。刺身のつまは、水に浸しておいたせん切り大根(せん切りにして干した大根)をさっと洗ってつける。水分を含んで甘みがあり、おいしい。しめもんは、一年間通してよくつくる。冬は、ふだんそう、めしげ菜、大根などをしめもんにする。豆腐あぶらげ(油揚げ)と火干かし魚のほぐしたものをだしに、ゆがいた野菜を適当に切って、砂糖と醤油で炒り煮にする。
写真:冬の晩飯
上:〔左から〕ふだんそうのしめもん、ぶりの刺身とせん切り大根/いも飯、びるの味噌おつけ
出典:田中熊雄 他編. 日本の食生活全集 45巻『聞き書 宮崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.277-278