聞き書 秋田の食事 県北米代川流域の食より
田植えが終わると、次は田の草取りである。梅雨の晴れ間をみながら一番草をとる。梅雨もあけ、かっと太陽が照りつけるころまで、二番草、三番草とまめに田に入り、草を抜く。苗の生長ぐあい、穂のつき方はどうか、水の入り方は、病気は出ないかどうかと、夜でも田をまわるほど、この時期は気の休まることなく忙しい。
おづけぐさ(味噌汁の実)は、畑から山から、いろいろな山野菜が豊富にとれるので、たっぷり使えるし、毎日違うくさを入れることができるので、汁わんには実だくさんによそえるし、おかわりもできる、うれしい時期である。よさく豆(さやえんどう)、ささぎ(いんげん)、二度いも、なす、きゅうり、とうがん、すぐり菜、みず(うわばみそう)と、数え切れない。
ぴかぴかの紫鮮やかななす漬、ぱりっとして緑色鮮やかなきゅうり漬、みずとうるい漬、梅干し漬と、朝ごはんはおいしくて、働く気力がわいてくる。
しかし、夏の朝ごはんはゆっくり食べてはいられない。食事をすませた人から先に、仕事に出ていく。子どもたちは、弁当箱を背負いかばんに入れたり、包んで腰にしばって学校へと飛び出していく。
写真:夏の朝食
上:玉菜のおひたし、漬物(なす、きゅうり)/下:麦飯、味噌汁(二度いも、ささげ、みず)
出典:藤田秀司 他編. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.239-240