聞き書 熊本の食事 阿蘇の食より
■晩――麦飯、にがうりとなすびのしぎ焼き、ふなのしそ煮、そうめん汁
この季節には、夏ばてを防ぐ意味で、川魚や油を使った食べものが多くなる。
水田の手入れもひとまずすめば、ひまひまに男は川魚とりに夢中になる。ふなのしそ煮が夜の食卓にあがるのもこのころである。焼酎のさかなにもってこいの食べものである。
また、夏の食卓で欠かせないものに、しぎ焼きがある。にがうりを薄く切ってあく抜きし、鉄なべに菜種油をひき、強火で苦みがとれるように炒めつける。なすびも一緒に入れて炒め、味噌で味をつける。なべいっぱいにしてもおかわりして食べてしまうほどおいしい。
そうめん汁もよく食べる。しいたけでだしをとった汁にゆでたそうめんを入れ、醤油で味をつけ、なすびやみょうがを浮かべた汁ものである。お盆の精霊さんにも夕飯のかわりによくつくってあげる。
写真:夏の晩飯
上:ふなのしそ煮、にがうりとなすびのしぎ焼き/下:麦飯、そうめん汁
出典:小林研三 他編. 日本の食生活全集 43巻『聞き書 熊本の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.27-29