もくじ
のり巻き
聞き書 埼玉の食事 東部低地の食より
村社御室さまの春の大祭や女衆の集まり、初節句のごちそうの一つとしてつくる。
すし飯は、一升の米を炊いて一合の酢と玉砂糖、塩少々を混ぜ合わせる。芯には甘く煮たかんぴょうを使う。
巻き簀の上にのり一枚をのせ、合わせ酢を手につけ、すし飯を平らにのばし、かんぴょうを芯に巻く。包丁をぬらして六個に切り分ける。ときには、でんぷ(魚の身をほぐして味をつけたもの)をのせたにぎりずしも一緒につくって食べる。
かしゃんば
聞き書 東京の食事 島〈伊豆大島〉の食より
秋に赤い実をつけるさんきらいの葉に包んで蒸した、かしわもちのようなものである。
結婚式や五月の節句、御三原さま、行者さまには必ずつくられ、とくに初節句の家では、一俵くらいの米をこずき(ひき)、近所の人総出で二日がかりでつくって、親せきなどに配る。
草はな(よもぎの葉)は出はじめに摘み、重曹を入れてゆで、からからになるまで干して、いつでも使えるように保存しておく。
米(ただ米七、もち米三)は一昼夜水に浸し、翌日臼でこずいて粉にしてふるう。小豆あんも前日に煮ておく。
乾燥した草はなをこずいて粉にし、煮え湯をかけてしぼり、冷めないうちに米粉を入れて臼で搗く。固い場合は水を入れ、耳たぶくらいのやわらかさにする。これであんこを包み、さんきらいの葉にくるんでわっぱ(せいろう)でふかす。二升くらいのわっぱに入れてへっついでふかすが、ふかしすぎると口があくので、その前にとり出す。
かやちまき
聞き書 長野の食事 西山の食より
かやで包むちまきである。米粉をこね鉢へ入れ、熱湯を注ぎながらはしでかき混ぜ、少し冷めたら手でこねる。これを直径一寸、長さ二寸ぐらいのだんごに丸める。
畑のくろから刈ってきたかやは、きれいに洗って水を切っておく。三本のかやを手にとり、葉を広げてだんごを包み、一本の葉で、包んだ外側をくるくる巻いておさえる。せいろで二〇分ほどふかすか、なべでゆでるかする。砂糖たまりで食べる。かやはこの時期のものがやわらかくて、一番つくりやすい。
かやの香りがし、節句がきたなあと思う。かやは笹の葉と同じように防腐剤にもなるといわれている。
新しく嫁さんがきた家では、初節句にこのかやちまきを実家へ持っていき、無事と感謝のしるしにする。
このかやの葉のとがって長い姿が鬼の角を表わし、家を守るという。また、ちまきをゆでたゆで汁を戸間口へかけると、へびやむかでが家の中へ入らないという。
ちまき
聞き書 新潟の食事 蒲原の食より
男の節句になくてはならない食べものがちまきである。笹だんごにはくず米を使うこともあるが、ちまきにはいいもち米しか使わない。
もち米をといでよく水を切り、笹の葉を三角に折った中へ入れる(少し内輪に入れる)。口を折り、もう一枚の笹の葉で口をくるむように三角にかぶせ、水でぬらしたいぐさで三角にしばる。
このとき、きつくしばると、煮ている間に米がふくれて破れることがあるので、ゆるめに結んでおく。
桶の中に水を入れ、一晩ちまきをその中につけておく。翌日なべに水をたっぷり入れて、水のうちからちまきを入れ、火にかける。中まで十分火が通るには一時間以上かかるが、ゆであがったのをむいてみると、米が三角のもちのようにむっちりとしている。もちとはまた別な食べやすさがあり、笹の香りが香ばしい。砂糖の入ったきな粉をつけて食べる。
笹もち
聞き書 新潟の食事 頸城海岸の食より
この地方独特の食べものである。春祭りや浜祭りには新笹は時期的に早いので、乾燥貯蔵しておいた前年の笹を使う。しかし、節句や夏行事には青々とした香り高い新笹を使うことができる。搗いて丸めたもちを上下二枚ずつの笹の間にはさむ、大きなもちである。
中に小豆あんを入れる場合もあるが、たいていは白もちで、黒砂糖の蜜やきな粉をつけて食べる。またよもぎを搗きこみ、春の香りを楽しむこともある。とくに新笹の笹もちは、来客の帰りみやげに喜ばれる。
出典:深井隆一 他. 日本の食生活全集 11巻『聞き書 埼玉の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.224-224
出典:渡辺善次郎 他. 日本の食生活全集 13巻『聞き書 東京の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.295-296
出典:向山雅重 他. 日本の食生活全集 20巻『聞き書 長野の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.270-270
出典:本間伸夫 他. 日本の食生活全集 15巻『聞き書 新潟の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.36-37, p.253-254