いろうさんもち

連載日本の食生活全集

2020年05月25日

聞き書 佐賀の食事 有田(焼きものの里)の食より

五月初旬の有田陶器市とその前後、来客にはあちこちでこのいろうさんもちが出される。緑色のふつもちの上に塩味の煮小豆がのっている。中のあんの甘さと塩味の小豆が口の中でうまく調和して、ほどよく食欲を刺激する。ふつの香りが加わって、一度食べたら忘れられない。有田の名物である。
ふつもちのつくり方は常法どおり。外側につける塩味の煮小豆は、煮くずれしないように水を少しずつ入れて炊き、小豆の姿をそのまま残す。煮あがったらそうけに移し、水気を切って塩をふる。塩加減には長年の経験がいる。
もろぶた(浅い長方形の木箱)に塩味の煮小豆を敷きつめ、あん入りのふつもちをころがして、小豆がとれないように上手にまぶす。手に水をつけて作業する。

 

出典:原田角郎 他. 日本の食生活全集 41巻『聞き書 佐賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.243-244

関連書籍詳細

日本の食生活全集41『聞き書 佐賀の食事』

原田角郎 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540910043
発行日:1991/11
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

稲作と茶と磁器発祥の地佐賀は、クリーク農業の地。佐賀平野の米とクリークの魚が食の基本。玄界灘と有明海という二つの海からは対馬暖流と干潟の恵みが四季の食膳をにぎわす。
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