聞き書 佐賀の食事 有田(焼きものの里)の食より
五月初旬の有田陶器市とその前後、来客にはあちこちでこのいろうさんもちが出される。緑色のふつもちの上に塩味の煮小豆がのっている。中のあんの甘さと塩味の小豆が口の中でうまく調和して、ほどよく食欲を刺激する。ふつの香りが加わって、一度食べたら忘れられない。有田の名物である。
ふつもちのつくり方は常法どおり。外側につける塩味の煮小豆は、煮くずれしないように水を少しずつ入れて炊き、小豆の姿をそのまま残す。煮あがったらそうけに移し、水気を切って塩をふる。塩加減には長年の経験がいる。
もろぶた(浅い長方形の木箱)に塩味の煮小豆を敷きつめ、あん入りのふつもちをころがして、小豆がとれないように上手にまぶす。手に水をつけて作業する。
出典:原田角郎 他. 日本の食生活全集 41巻『聞き書 佐賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.243-244