聞き書 茨城の食事 南部水田地帯の食より
小麦だんごには、ぜんびんだんごと、あんかけだんごとがある。
ぜんびんは、だんごをあんの中でゆでたようなものである。あんをつくるには、小豆をゆで、それを木綿の袋でこして、そのあんの溶けこんだ液に砂糖を入れて煮つめるわけだが、そのとき、水でこねた小麦粉のだんごも一緒に煮てしまうのである。
あんかけは、ゆでただんごに醤油味のくず粉のあんをかけたものである。
小麦だんごは、新小麦がとれる夏から秋にかけて、おやつとしてもよく食べるが、六月から七月にかけてのこの地方の行事、祇園、おしぐれ、新箸祇園、七夕、人形送りなどには欠かせない食べものである。
ぜんびんは甘く、あんかけは醤油味であるから、甘いのに飽きればあんかけを、というように、両方あることによって食も進む。
出典:桜井武雄 他. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.118-119