聞き書 長崎の食事 五島の食より
麦飯そのものは、四月ころの新麦のとれたときが、ねばりがあって一番おいしい。しかし、夏場の冷や汁の麦飯も、それに負けずにうまいものである。きゅうりのとれる夏の夕食によくつくる。冷や汁にする麦飯は朝のうちに炊いておく。
このころは、夏疲れで食欲のないことが多いのだが、冷や汁にすると食欲がわいて、思わず何杯もおかわりしてしまう。
青じその葉をすり鉢ですり、次に味噌もする。きゅうりは薄い輪切りにして、味噌を少し入れ、手でもんでしんなりさせると、きゅうりの下地(汁)が出ておいしくなる。青じそ、味噌、きゅうりを混ぜ合わせ、冷たい井戸水を少し入れる。水は多く入れないで、濃いめの味つけにしておく。その汁を杓子ですくって麦飯にのせて食べる。それではあまり塩からいというときは、水を足して薄めて食べることもある。青じそがなくなったら、しその実を使う。
出典:月川雅夫 他. 日本の食生活全集 42巻『聞き書 長崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.234-234