聞き書 秋田の食事 県南横手盆地の食より
なすの季節になると、味噌汁、漬物、煮ものも、すべてなすを材料とした料理になる。その中でも、なすのほど焼きは王さまである。ほどというのは、火を焚いているいろりの中央のことで、この熱いほどの灰の中へ埋めて蒸し焼きにするものは種類も多く、いずれもおいしい。二度いも、栗、さつまいも、しとぎもちなどのほか、もぎたての大きななすを熱いほどの灰にさしこみ、なすの皮にしわが寄ってきたらとり出して、熱いうちに皮をむき、蒸れてやわらかくなったなすを裂いて皿に盛り、醤油とすりしょうがなどをつけて食べる。さほど手がかからないが、その味は絶品である。
また、この蒸し焼きなすを細く裂いて、なすのじんだあえとすることもある。これもおいしい。じんだは、青大豆を畑からとってきて、すぐ豆をもぎとり、さっとゆで、さやの中から豆をしぼり出し、このやわらかい青大豆をすり鉢ですりつぶして、塩と砂糖で味つけしたものである。
出典:藤田秀司 他. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.132-132