なすのほど焼き

連載日本の食生活全集

2020年07月09日

聞き書 秋田の食事 県南横手盆地の食より

なすの季節になると、味噌汁、漬物、煮ものも、すべてなすを材料とした料理になる。その中でも、なすのほど焼きは王さまである。ほどというのは、火を焚いているいろりの中央のことで、この熱いほどの灰の中へ埋めて蒸し焼きにするものは種類も多く、いずれもおいしい。二度いも、栗、さつまいも、しとぎもちなどのほか、もぎたての大きななすを熱いほどの灰にさしこみ、なすの皮にしわが寄ってきたらとり出して、熱いうちに皮をむき、蒸れてやわらかくなったなすを裂いて皿に盛り、醤油とすりしょうがなどをつけて食べる。さほど手がかからないが、その味は絶品である。
また、この蒸し焼きなすを細く裂いて、なすのじんだあえとすることもある。これもおいしい。じんだは、青大豆を畑からとってきて、すぐ豆をもぎとり、さっとゆで、さやの中から豆をしぼり出し、このやわらかい青大豆をすり鉢ですりつぶして、塩と砂糖で味つけしたものである。

 

出典:藤田秀司 他. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.132-132

関連書籍詳細

日本の食生活全集5『聞き書 秋田の食事』

藤田秀司 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540850660
発行日:1986/02
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 386頁

ハタハタずし・しょっつる・いぶり大根・各種貝焼(カヤキ)鍋など、自然の要求と人間の要求が一致した発酵食文化の粋・秋田の食事を、農耕・漁労の営みと共に描く。
田舎の本屋で購入

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