とびうおのくずし

連載日本の食生活全集

2020年08月07日

聞き書 和歌山の食事 熊野灘の食より

とびうおは黒潮に乗ってくる。潮岬沖に当たった潮流は急に浅くなっているところで渦になり、立ち上がる。ここがとびうおの漁場になる。また、岬のとびか、雑賀崎のたい釣りかと、荒漁で知られている。春とび、秋とび、古せん(大きくなって味の落ちた秋とび)などと、串本の人は漁期を分けている。
身はよくしまり、つくったり焼いたりしてもおいしいが、くずし(揚げもの)にしてぬくぬくを食べるのを最上とする。くずしは、生の身をすり鉢ですりつぶしてうどん粉をほんの少し入れ、よく練って平たいだんごにまとめ、油で揚げる。とくに塩などは入れない。

写真:とびうおと、とびうおのくずし

 

出典: 安藤精一 他. 日本の食生活全集 30巻『聞き書 和歌山の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.270-271

関連書籍詳細

日本の食生活全集30『聞き書 和歌山の食事』

安藤精一 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540880582
発行日:1989/02
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 380頁

かつおの一本釣り漁で活気づく田辺湾、黒潮に乗ってくるまぐろ、鯨などが食卓をにぎわす熊野灘、ことあるごとにもちを搗き、すしをつくる紀ノ川流域など紀州の食の全貌。
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