三度のごはんと2回の「たばこ」で重労働をのりきる─日常の食生活

連載日本の食生活全集

2021年05月13日

聞き書 宮城の食事 北上丘陵の食より

深く凍っていた田畑の土もようやくやわらかくなると、田畑へ通う日が多くなる。まず最初に麦踏みがある。追肥、土入れ、きっかけ(土寄せ)がそれに続くが、その間、米づくりのほうも種籾の準備に入り、冷えた朝にはまだ薄氷も張る苗代で、下ごしらえがはじまる。
このころになると、炭焼きなどの山仕事は一応切りあげとなる。そしてほどなく田植えの季節に入るが、ちょうど春蚕の仕事が重なり、一挙に忙しくなる。田植えが終わると、ほっとする間もなく、畑に大豆やそばの種を播かなければならない。こうなると女たちも野外の仕事が本分となり、食事づくりや子育てのほうは片手間にすることになる。
午前のたばこ―やき飯、凍みもち、田植えには赤飯も
田畑の仕事や春蚕の世話など、この時期は重労働が続くので、午前と午後の両方にたばこ(小昼)をとる。午前のたばこは一〇時ころで、やき飯や、あぶった凍みもちなどを食べながら一服する。
田植えや蚕の上蔟、繭かきなどには近所や親せきから手伝いを受けるが、そういうときは、たばこもいつもより上等のものを用意する。赤飯をふかし、煮つけや漬物などを添えることが多い。赤飯はもちと同じぐらいの特別なごちそうと考えられているし、煮つけにしても、材料になまり節や油揚げが入るので、ふだんのものよりは上等である。

写真:田植えのたばこ(午前)
手伝いの人を頼むときは、たばこの内容も気ばったものになる。〔左上から時計回りに〕たくあん、ゆで豆、煮しめ、赤飯

 

出典:竹内利美 他. 日本の食生活全集 4巻『聞き書 宮城の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.174-177

関連書籍詳細

日本の食生活全集4『聞き書 宮城の食事』

竹内利美 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540890062
発行日:1990/02
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

米どころ宮城は旧伊達藩以来の米どころで、もちの多彩な食べ方を誇る。三陸海岸では四季いろいろな魚貝がとれ、浜の人たちだけでなく、内陸の人々の食膳もにぎわす。
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