手間と金をかける祭り膳―晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2021年09月06日

聞き書 秋田の食事 県南横手盆地の食より

秋の空は澄んで月の光も美しい。八月十五日の満月を「豆名月」と呼んでいる。この日は畑から青豆をとってきて葉だけをとり、枝豆にしてそのままゆでて供える。夕方、もちを搗いて直径七寸くらいの水とりもち二つをお膳にのせ、枝豆、果物などとともに月のよく見えるところに供える。九月の名月は十三日で、同じように栗やいものこを膳にのせて供え、すすきも添える。八月の名月にはゆで豆を食べ、九月の名月にはゆで栗を食べる。
九月の節供(節句)を三供という。九月九日(初節供)、九月十九日(中の節供)、九月二十九日(刈上げの節供)の三回で、どの日にも、もちを搗いて田の神に供える。とくに刈上げの節供は「ほいどももちを搗く」(乞食ももちを搗く)といって、米を量る箕に米粉をふり、その上に一臼もちをのせて、のしもちをつくる。このもちを「箕取りもち」ともいい、その上に刈り稲二束、稲刈り鎌、菊の花などを添え、箕のまま供える。

写真:名月膳
膳内は、ゆでた枝豆、お供えもち、梨、ぶどう。ろうそくをともし、すすきもあげて月を拝む。

 

出典:藤田秀司 他. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.109-111

関連書籍詳細

日本の食生活全集5『聞き書 秋田の食事』

藤田秀司 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540850660
発行日:1986/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 386頁

ハタハタずし・しょっつる・いぶり大根・各種貝焼(カヤキ)鍋など、自然の要求と人間の要求が一致した発酵食文化の粋・秋田の食事を、農耕・漁労の営みと共に描く。
田舎の本屋で購入

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