聞き書 秋田の食事 県央男鹿の食より
秋は野菜がいろいろあり、味噌汁や漬物の材料に困らない。漬物は白菜や大根など二、三種類はいつもあるようにする。魚も春や夏に漬けておいたものがあって、食事づくりは楽にできる。
朝ごはんは、秋のうちに新米をひくので、その二番米を炊く。味噌汁の実はあんぷら、わかめ。それに玉菜のひたし、醤油の実、白菜漬を添える。
昼は忙しいので簡単にすませるが、きつい仕事が多いので、朝に炊いた米のごはんを食べるようにし、朝の残りの味噌汁、魚は塩鮭、塩いわしの焼いたもの、それにかぼちゃの煮たものや、あらめ、ごぼう、にんじんなどを煮た煮菜などで、腹いっぱい食べるようにする。
夕食は、鮭漁の季節なので、鮭を切身にして焼き、ゆで菊や大根おろしをつけ合わせたり、鮭の頭や骨を切って大根、あんぷらと煮るざっぱ(頭や骨など)汁にする。
忙しく長かった春から秋までの農作業、その合い間をぬって手間をとり、食べるものを確保し、漬けこみ、乾燥し、加工するなどの仕事が一段落するころ、初雪が降ってくる。
写真:秋の夕食
上:〔左から〕なた漬、鮭の切身、大根おろし、菊/下:ごはん、鮭のざっぱ汁
出典:藤田秀司 他編. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.30-32