一年中で一番豊富な食べもの―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年09月30日

聞き書 秋田の食事 県央男鹿の食より


秋は野菜がいろいろあり、味噌汁や漬物の材料に困らない。漬物は白菜や大根など二、三種類はいつもあるようにする。魚も春や夏に漬けておいたものがあって、食事づくりは楽にできる。
朝ごはんは、秋のうちに新米をひくので、その二番米を炊く。味噌汁の実はあんぷら、わかめ。それに玉菜のひたし、醤油の実、白菜漬を添える。
昼は忙しいので簡単にすませるが、きつい仕事が多いので、朝に炊いた米のごはんを食べるようにし、朝の残りの味噌汁、魚は塩鮭、塩いわしの焼いたもの、それにかぼちゃの煮たものや、あらめ、ごぼう、にんじんなどを煮た煮菜などで、腹いっぱい食べるようにする。
夕食は、鮭漁の季節なので、鮭を切身にして焼き、ゆで菊や大根おろしをつけ合わせたり、鮭の頭や骨を切って大根、あんぷらと煮るざっぱ(頭や骨など)汁にする。
忙しく長かった春から秋までの農作業、その合い間をぬって手間をとり、食べるものを確保し、漬けこみ、乾燥し、加工するなどの仕事が一段落するころ、初雪が降ってくる。

写真:秋の夕食
上:〔左から〕なた漬、鮭の切身、大根おろし、菊/下:ごはん、鮭のざっぱ汁

 

出典:藤田秀司 他編. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.30-32

 

関連書籍詳細

日本の食生活全集5『聞き書 秋田の食事』

藤田秀司 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540850660
発行日:1986/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5判上製 386頁

ハタハタずし・しょっつる・いぶり大根・各種貝焼(カヤキ)鍋など、自然の要求と人間の要求が一致した発酵食文化の粋・秋田の食事を、農耕・漁労の営みと共に描く。
田舎の本屋で購入

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