聞き書 長野の食事 伊那谷の食より
蚕の片づくのを待って、十月十日ごろから稲刈りをする。稲を刈りとるとすぐ、稲株を始末して麦を播かねばならない。稲の色づきぐあいをみながら刈取り作業に入る。
稲刈りの忙しいなかで、あわ、そば、小豆、大豆などの雑穀類のとり入れも、あわせてやらなければならない。そのほか、野菜のとり入れ、冬の準備のための漬物づくりや薪とり、干し柿づくり、来年のための桑畑づくりと、一年中で一番忙しい季節である。
■朝――麦飯か干葉飯、かぶ菜漬
秋は日が短い。作業のだんどりをつけて働かなければならないが、天候に大きく左右されるから、晴れた日は、なおのこと気ぜわしい。
朝食はゆっくりとってはいられない。えまし麦の麦飯または干葉飯で、かぶ菜漬をおかずに食べるが、毎月一日と十五日にはさんまを半分か、いわしを食べる。
写真:秋の朝食
上:かぶ菜漬、煮しめ(こうしいも、にんじん)/下:麦飯、味噌汁(こうしいも、大根、菜っぱ)
出典:向山雅重 他編. 日本の食生活全集 20巻『聞き書 長野の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.105-107