さんまの塩焼きとかぶ菜漬が食欲をそそる――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2024年10月02日

聞き書 長野食事 伊那谷の食より

蚕の片づくのを待って、十月十日ごろから稲刈りをする。稲を刈りとるとすぐ、稲株を始末して麦を播かねばならない。稲の色づきぐあいをみながら刈取り作業に入る。
稲刈りの忙しいなかで、あわ、そば、小豆、大豆などの雑穀類のとり入れも、あわせてやらなければならない。そのほか、野菜のとり入れ、冬の準備のための漬物づくりや薪とり、干し柿づくり、来年のための桑畑づくりと、一年中で一番忙しい季節である。
朝――麦飯か干葉飯、かぶ菜漬
秋は日が短い。作業のだんどりをつけて働かなければならないが、天候に大きく左右されるから、晴れた日は、なおのこと気ぜわしい。
朝食はゆっくりとってはいられない。えまし麦の麦飯または干葉飯で、かぶ菜漬をおかずに食べるが、毎月一日と十五日にはさんまを半分か、いわしを食べる。

写真:秋の朝食
上:かぶ菜漬、煮しめ(こうしいも、にんじん)/下:麦飯、味噌汁(こうしいも、大根、菜っぱ)

 

出典:向山雅重 他編. 日本の食生活全集 20巻『聞き書 長野の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.105-107

関連書籍詳細

日本の食生活全集20『聞き書 長野の食事』

向山雅重 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540860768
発行日:1986/12
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

十州に境を連ねる信州の山と川、四つの平の恵みを生かしきる女の技を収録。木曽のすんき漬、東信の野沢菜漬、中信の稲扱菜など、特徴ある野菜がいっぱい。海こそなけれよろず足らわぬことなき暮らしと食を聞書きする。
田舎の本屋で購入

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