聞き書 東京の食事 多摩川上流の食より
この時期は「仕事が飯を食う」といわれ、麦刈りや田んぼ仕事の忙しいときは、おこじゅうにも梅干し入りの大きなにぎり飯を食べる。また、腹いっぱい食べなければ、とても仕事はこなせるものではない。
野菜は、四月も末くらいにならないと、青いものはあまりない。冬にひきつづき、大根、にんじん、ごぼう、白菜がよく使われる。
■晩飯――煮こみうどん、ごぼうのきんぴら
大根、にんじん、里芋を切って大釜に入れて煮たたせ、のしたうどんを入れて煮こんで食べる。煮こみにしないで、ゆでたうどんをつゆにつけて食べることも多い。また、うどんは、麦飯のかて(お菜)にして食べることもある。
蚕の見回りで、夜もおそくなる。ただし、とくに夜食はつくらない。座敷は蚕室になるため、家族は台所のすみにごろ寝する毎日である。
写真:春の晩飯
上:大根の味噌漬ときゃらぶき、うどんのつゆ、きんぴらごぼう/下:麦飯、うどん
出典: 渡辺善次郎 他編. 日本の食生活全集 13巻『聞き書 東京の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.234~234