子どもも手伝うどじょうのはたきだんご汁――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2024年07月18日

聞き書 新潟食事 蒲原の食より


畑にきゅうりとなすがたくさんなる。味噌汁の実がなすになり、漬物もきゅうりとなすになる。毎日のようにきゅうりとなすの日が続く。
田植え後の大仕事、田の草取りが待っている。弁当のおかずは味噌漬、塩いわし、梅干しといった塩からいものに、生きゅうりに生味噌を添えて持っていったり、または塩漬のなすであったりする。このころから昼寝をする。
梅雨も終わりになってきて、毎日の雨で田の水かさが増してくる。「今日はとれるな」と見定めた男たちは、どじょう籠の口にわらを詰めこんだものを何本か用意する。夕方、田の水口を切り、田のほうに尻を向けてそれを仕かけて帰る。田の水が川へ落ちるのにつれて、どじょうが籠の中へ入ってくる。餌を使わなくても、水さえ出ればどじょうがとれる仕かけである。
夕方になる。姑の声で「今日はどじょうはたきだぞ」ということになると、男も子どもも張り切る。たんたん、はたき台の上で男が鉈でどじょうをたたく音、とんとん、子どもが負けずに出刃包丁でたたく音がにぎやかに響く。
そして夕食は、はたきだんご汁となる。大なべに、どじょうのはたきだんごとねぎがたっぷり入っている。一ぴきのままのどじょう汁が食べられない人でも、これは食べられる。汗をかきかき何杯もおかわりする。これになす漬があれば言うことはない。

写真:夏の夕食
上:なすの漬物/下:てんこぶかし、どじょうのはたきだんご汁

 

出典:本間伸夫 他編. 日本の食生活全集 15巻『聞き書 新潟の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.24-25

関連書籍詳細

日本の食生活全集15『聞き書 新潟の食事』

本間伸夫 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540850257
発行日: 1985/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 378頁

「炊く」「蒸す」「搗く」「こねる」「焼く」。お米をさまざまに味わい分けてきた新潟県内を六つの食文化圏に分けて、それぞれの地域の豊饒を語ってもらう。
田舎の本屋で購入

このカテゴリーの記事 - 日本の食生活全集
おすすめの記事