聞き書 新潟の食事 蒲原の食より
畑にきゅうりとなすがたくさんなる。味噌汁の実がなすになり、漬物もきゅうりとなすになる。毎日のようにきゅうりとなすの日が続く。
田植え後の大仕事、田の草取りが待っている。弁当のおかずは味噌漬、塩いわし、梅干しといった塩からいものに、生きゅうりに生味噌を添えて持っていったり、または塩漬のなすであったりする。このころから昼寝をする。
梅雨も終わりになってきて、毎日の雨で田の水かさが増してくる。「今日はとれるな」と見定めた男たちは、どじょう籠の口にわらを詰めこんだものを何本か用意する。夕方、田の水口を切り、田のほうに尻を向けてそれを仕かけて帰る。田の水が川へ落ちるのにつれて、どじょうが籠の中へ入ってくる。餌を使わなくても、水さえ出ればどじょうがとれる仕かけである。
夕方になる。姑の声で「今日はどじょうはたきだぞ」ということになると、男も子どもも張り切る。たんたん、はたき台の上で男が鉈でどじょうをたたく音、とんとん、子どもが負けずに出刃包丁でたたく音がにぎやかに響く。
そして夕食は、はたきだんご汁となる。大なべに、どじょうのはたきだんごとねぎがたっぷり入っている。一ぴきのままのどじょう汁が食べられない人でも、これは食べられる。汗をかきかき何杯もおかわりする。これになす漬があれば言うことはない。
写真:夏の夕食
上:なすの漬物/下:てんこぶかし、どじょうのはたきだんご汁
出典:本間伸夫 他編. 日本の食生活全集 15巻『聞き書 新潟の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.24-25