あっさりした漬物や酢のもので疲れをいやす――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2024年07月30日

聞き書 香川食事 東さぬきの食より

夏の昼飯
魚見(山の上から魚群を見張る人)の漁師は、県境にある大坂山の崖ぶちに登り、播磨灘を見下ろす。魚の群れを見つけると、「おーい、魚が来たぞー」とふもとの人びとに知らせる。
魚見の声がすると、大人も子どもも田畑仕事をほっといて、たなかご(竹製の手さげかご)を手に一目散に浜へ出る。そして地引き網を一生懸命に引く。網には、ぴちぴち跳ねるあじやいわしがかかり、漁師は手づかみで、たなかごへ「ほいほい」と気前よく入れてくれる。子どもたちは、銀色に光る魚を持って家へ駆けて帰る。そして昼飯のおかずにする。
あじの三杯(三杯酢あえ)と、きゅうりの酢のものをおかずにすると、何杯もおかわりして、おひつの底をついてしまう。さわやかな味と満腹感で、田の草取りの疲れも吹っ飛んでしまう。

写真:夏の昼飯
麦飯、あじの三杯、きゅうりの酢のもの

 

出典:井上タツ 他編. 日本の食生活全集 37巻『聞き書 香川の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.25-26

関連書籍詳細

日本の食生活全集37『聞き書 香川の食事』

井上タツ 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540900068
発行日: 1990/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

じゃこだしで食べるさぬきうどん、さわらでつくる魚ばっつおのごちそう、行事に欠かせない鮒のてっぱい。讃岐三白の伝統をひく食べものと溜池からの恵みを聞き書きする。
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