聞き書 和歌山の食事 和歌浦沿岸の食より
天気になって船が出ると、夜のおかずにくちの煮つけが出る。白身で骨が薄く、冷えると汁がこごり、熱い麦飯の上にこごった汁をのせると麦飯の熱で溶けておいしい。
■夜――麦飯、くちの煮つけ、大根と揚げの煮もの、漬物
くちは、醤油に水を少し入れて煮たて、魚を一ぴきずつ入れてふたをして煮る。「秋くち」といって、一年中でくちの一番おいしい時期である。秋は台風が多く、漁に出られないこともよくある。夕食に魚があると子どもたちは喜び、うれしい夕食になる。
大根の煮ものは、なべに水といりこ、せん切りの揚げ、厚切りの大根を入れて炊き、煮えたら砂糖少しと塩、醤油で味をつける。漬物を大鉢によそって出す。
古漬がたくさんたまってくると、細かくきざんで水につけて塩出しをする。なべに水を入れて沸騰したら生のえびじゃこを入れ、塩出ししたきゅうりやなすの古漬を加える。漬物がやわらかくなったら砂糖を少し入れて、塩と醤油も入れて味をつける。
写真:秋の夕食
麦飯、大根と揚げの煮もの、くちの煮つけ、こんこ
出典:安藤精一 他編. 日本の食生活全集 30巻『聞き書 和歌山の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.101-103