聞き書 山形の食事 県南置賜の食より
夏の野菜の出盛りに、新鮮な生食が簡単にできてしかも滋養があり、また味も満点の即席料理がだしである。酒のさかなにも好まれる。
蚕の忙しいときなど、おかずづくりをするひまがない、しかしもう一品おかずがほしいというような昼食どき、畑からきゅうり、なす、みょうが、しその葉を摘んできてきれいに洗い、きゅうり、なすは細かいさいの目に、みょうが、しその葉も細かくきざんで混ぜ合わせ、醤油をかけて食べる。そのほか、ゆでてある枝豆をはじいて加えると、なおいろどりがよくおいしい。
夏は、生きゅうりを薄い小口切りにし、少々の塩でもみ、砂糖や食酢で味をつけて食べる「きゅうりびき」もよくつくる。清涼を呼ぶおかずである。だしと同様、あくまで新鮮な野菜であることが条件である。
出典:木村正太郎 他. 日本の食生活全集 6巻『聞き書 山形の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.182-182