聞き書 長崎の食事 諌早・西東彼杵の食より
日は長くなり、いよいよ麦刈り、田植え、いもさしと一年中で最も忙しい季節である。まず麦刈りをする。裏作麦のあとはすぐに打ち起こし、水を張り、ならして田植えをすまさねばならない。畑には、いもさしの仕事が待っている。
田植えには近所や親類の加勢を受けるので、米は一斗釜で炊く。
■夜
塩くじらを少し多く使って、じゃがいもやごんぼの煮しめをつくり、さなぶい(さなぶり)きゅうりといって、今年の初なりのきゅうりもみ、味噌汁、それにだいやみ(疲れとりの晩酌)にお酒を添える。お飯は白飯である。
田植えがすめば、加勢を受けた人やゆい仲間を呼び、各家でさなぶいをする。とってきたあげまきの空炊き、くじら入りの煮しめ、きゅうりなますなどで労をねぎらう。さらに部落全部で田祈祷をする。けいらんまんじゅう、酒まんじゅう、きゅうり、塩さば、豆腐などを持ち寄り、宮司さんに来てもらって豊作を祈念する。お神酒も用意し、うーだいこ(大太鼓)と盛り囃子(小太鼓)に合わせて浮立踊りをして奉納する。これから暑い盛りに田の手入れをしていかなければならない。ちょっとの暇をやりくりして、米、野菜持参で小浜へ湯治に出かけることができれば、なによりの骨休めになる。
写真:田植えどきの夕食
上:さなぶいきゅうりのきゅうりもみ/中:煮しめ(くじら、じゃがいも、ごんぼ、豆腐かんぼこ)/下:白飯
出典:月川雅夫 他. 日本の食生活全集 42巻『聞き書 長崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.24-25