秋─魚の脂がのり、刺身、酢ものが最高の味

連載日本の食生活全集

2021年10月21日

聞き書 福岡の食事 豊前漁村の食より

秋は、船釣り、枡網、うたせ漁、ぼら網漁、あみ曳網漁業の最盛期となり、漁場はいちだんと活気が出てくる。
とれる魚は、えび、こべし(小型のいわし)、たちうお、あみ、えそ、はぜ、ひら、ぼら、すずき、たこなど、種類も多く、とりたての魚の味は最高である。脂がのっているので、刺身、酢ものにするとうまい。
天気のよい日には、雑魚、あみ、はぜなど、冬に食べる魚を日干しにして保存する。
夜―麦飯、あみちり
酢だいだいの使えるこのころは、ちっちりは最高の味である。ふぐ、はもなどは、ちり魚としては一級品であるが、あみのちりも格別の味である。野菜も、しゅんぎく、ねぶか、白菜がとれるので、たくさん入れて、酢だいだいを入れた酢醤油で食べる。
かれいやいわし、さばの煮つけ、里芋の煮もの、ほうれんそうのおひたしなどもよくつくる。

写真:秋の夕食
上:〔左から〕このしろの刺身(醤油)、べかごとちびらのちり(豆腐、しゃんぎく、ねぎ)、味噌漬とたくあん漬/中:あさり汁/下:麦飯に、かますの醤油漬を添えてお茶漬にする。

 

出典:中村正夫 他. 日本の食生活全集 40巻『聞き書 福岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.307-308

関連書籍詳細

日本の食生活全集40『聞き書 福岡の食事』

中村正夫 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540860775
発行日:1987/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

玄界灘・有明海・周防灘の三つの海と、筑後川・遠賀川などの豊かな水にうるおう古代国家発祥の地・福岡の食は、ロマンと豊饒、篤き信仰心と伝統に育まれている。
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