聞き書 福岡の食事 豊前漁村の食より
秋は、船釣り、枡網、うたせ漁、ぼら網漁、あみ曳網漁業の最盛期となり、漁場はいちだんと活気が出てくる。
とれる魚は、えび、こべし(小型のいわし)、たちうお、あみ、えそ、はぜ、ひら、ぼら、すずき、たこなど、種類も多く、とりたての魚の味は最高である。脂がのっているので、刺身、酢ものにするとうまい。
天気のよい日には、雑魚、あみ、はぜなど、冬に食べる魚を日干しにして保存する。
■夜―麦飯、あみちり
酢だいだいの使えるこのころは、ちっちりは最高の味である。ふぐ、はもなどは、ちり魚としては一級品であるが、あみのちりも格別の味である。野菜も、しゅんぎく、ねぶか、白菜がとれるので、たくさん入れて、酢だいだいを入れた酢醤油で食べる。
かれいやいわし、さばの煮つけ、里芋の煮もの、ほうれんそうのおひたしなどもよくつくる。
写真:秋の夕食
上:〔左から〕このしろの刺身(醤油)、べかごとちびらのちり(豆腐、しゃんぎく、ねぎ)、味噌漬とたくあん漬/中:あさり汁/下:麦飯に、かますの醤油漬を添えてお茶漬にする。
出典:中村正夫 他. 日本の食生活全集 40巻『聞き書 福岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.307-308