かぶ菜漬

連載日本の食生活全集

2021年11月04日

聞き書 長野の食事 伊那谷の食より


かぶ菜漬には切り漬と長漬がある。漬ける種類は、この地方でつくられた源助かぶ菜である。葉がやや多く、ずい(茎)の部分が少ないが、味がよいので、この地方では源助かぶ菜が主流である。霜が数回降りて、のりが出た(ずいの繊維がやわらかくなり、すじっぽさがなくなる)ところで漬けると、やわらかくてよい。十一月末ごろから漬物の時期である。
切り漬は、十二月から二月ごろをめどに食べるように漬ける。一寸くらいの長さに切って、桶の中へ塩をふり入れては、かぶ菜を入れて漬けていく。切ってあるので、すぐ水が上がる。桶の一番上に柿の皮の干したものを、布袋に平らになるように詰めて置き、ふたをして重石をする。
長漬は大切なおかずである。三月から食べはじめるので、塩をきかせて四斗桶二本くらいに漬ける。かぶ菜一にぎりくらいを一束に束ねておき、これを一つ並べに桶の底から並べながら塩をふる。塩加減は、霜降りていどといって、霜が降りたくらいの白さにする。やはり柿の皮か、四つ割りに切った干し柿を布袋に入れてふたにして、その上にさらに木のふたをする。大きな重石をして、水が上がってきたらやや軽い重石ととりかえる。ふたの上に常に漬け汁があるように、様子を見る。べっこう色に漬かったかぶ菜漬は、冬の食卓に欠かせないもので、これを食べてはお茶を飲む。

写真:晩秋のかぶ菜引き

 

出典:向山雅重 他編. 日本の食生活全集 20巻『聞き書 長野の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.126-127

関連書籍詳細

日本の食生活全集20『聞き書 長野の食事』

向山雅重 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540860768
発行日:1986/12
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

十州に境を連ねる信州の山と川、四つの平の恵みを生かしきる女の技を収録。木曽のすんき漬、東信の野沢菜漬、中信の稲扱菜など、特徴ある野菜がいっぱい。海こそなけれよろず足らわぬことなき暮らしと食を聞書きする。
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