聞き書 香川の食事 瀬戸内沿岸の食より
■秋祭り
旧の八月十五日の八幡さんにはじまり、天神さん、九月十五日の明神さんと続く。夏祭りと同じように、ごちそうをして招きあいをするが、秋祭りはなんといっても盛りだくさんの準備がある。
八幡さんのお祭りのときは、まだ秋の枡建漁は本格的ではないが、とれた魚は祭りだからとお客さん用に回す。甘酒、おすし、赤飯を持ってご案内に行き、当日は名物の押しぬきずし、えびじゃこ(小えび)、いも、ごぼう、れんこんの揚げもん、いもたこ(里芋とたこの煮もの)、魚の豆腐汁、それにそのときの漁によっては、いりつけ、焼き魚、刺身をつける。晴れ着を着せてもらってお祭りに出かけた子どもは、露店であめ、お菓子、柿、栗などを買う。
祭りの最後、九月十五日の明神さんは尾崎姓の者だけが集うお祭りで、当家が白飯、おひらなどをふるまう。
写真:秋祭りの膳
膳内:〔上〕いもたこ、揚げもん。〔下〕押しぬきずし、酒、ねばごちと豆腐の吸いもん/膳外:甘酒
出典:井上タツ 他編. 日本の食生活全集 37巻『聞き書 香川の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.275-276