招き招かれて、豊漁を感謝する秋祭り――晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2024年09月18日

聞き書 香川食事 瀬戸内沿岸の食より

秋祭り
旧の八月十五日の八幡さんにはじまり、天神さん、九月十五日の明神さんと続く。夏祭りと同じように、ごちそうをして招きあいをするが、秋祭りはなんといっても盛りだくさんの準備がある。
八幡さんのお祭りのときは、まだ秋の枡建漁は本格的ではないが、とれた魚は祭りだからとお客さん用に回す。甘酒、おすし、赤飯を持ってご案内に行き、当日は名物の押しぬきずし、えびじゃこ(小えび)、いも、ごぼう、れんこんの揚げもん、いもたこ(里芋とたこの煮もの)、魚の豆腐汁、それにそのときの漁によっては、いりつけ、焼き魚、刺身をつける。晴れ着を着せてもらってお祭りに出かけた子どもは、露店であめ、お菓子、柿、栗などを買う。
祭りの最後、九月十五日の明神さんは尾崎姓の者だけが集うお祭りで、当家が白飯、おひらなどをふるまう。

写真:秋祭りの膳
膳内:〔上〕いもたこ、揚げもん。〔下〕押しぬきずし、酒、ねばごちと豆腐の吸いもん/膳外:甘酒

 

出典:井上タツ 他編. 日本の食生活全集 37巻『聞き書 香川の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.275-276

関連書籍詳細

日本の食生活全集37『聞き書 香川の食事』

井上タツ 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540900068
発行日: 1990/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

じゃこだしで食べるさぬきうどん、さわらでつくる魚ばっつおのごちそう、行事に欠かせない鮒のてっぱい。讃岐三白の伝統をひく食べものと溜池からの恵みを聞き書きする。
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