聞き書 長野の食事 木曽の食より
秋の彼岸は「親知らず、子知らず、九月になると霜が来る」といって、彼岸行事はやらない。このころから霜の降りるまで、山に馬を預けて、秋あげ(とり入れ)にいそしむ。ひえ、あわ、稲のとり入れ、打ちろ(実のものを枝から落とす作業)、小豆、大豆のとり入れ、稲の脱穀と、お天気の続くことを祈りながらの秋あげである。本漬にそなえ、漬菜の抜き菜にすんきの素を加えて発酵させる。これを三度、四度とくり返しながらふやしていく。お彼岸にはかぼちゃも食べられるようになる。凍みないうちに食べることにする。たまにはかぼちゃぞうすいも喜ばれる。かぼちゃを煮て塩味をつけたものに米を洗わずに入れ、ゆっくり炊きあげる。子どもたちは山梨や栗をひろってきておやつにする。
■ようけ――かぼちゃぞうすい、干し魚、酢のもの
夜、かぼちゃぞうすいのときは、とろけるようにのどを通る。干し魚に酢のもの、漬物をかって食べる。
写真:秋のようけ
上:〔左から〕菜漬、干したら/下:〔左から〕かぼちゃぞうすい、きゅうりの酢のもの
出典:向山雅重 他編. 日本の食生活全集 20巻『聞き書 長野の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.72-73