聞き書 山形の食事 庄内平野の食より
月夜のかには軽くて身が少ないといわれているが、川がには十月ごろからおいしくなる。はさみと爪先をもぎとって「なんまいだぶつ」と唱えながら甲らをはがし、えらもとる。けやきなど木目の固く厚いまないたの上にかにをのせ、なたや出刃包丁でよくたたいたものを味噌こし(竹の皮でつくったざる)に入れ、味噌汁の煮たっているなべに入れてよくかき混ぜる。かにの身がぷんぷん浮いてきたら、焼き麩やねぎを入れる。非常にあっさりとして軽い味で、何杯もおかわりする。
出典:木村正太郎 他. 日本の食生活全集 6巻『聞き書 山形の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.234-234