聞き書 秋田の食事 県央男鹿の食より
はたはたの腹をしぼってぶりこ(魚卵)を出し、浅い木箱に並べ、表面をならして、そのまま海水の入った桶に三〇分ほどつけ、一枚の板のように固くする。これをすだれの上に並べて半日ほどおき、ざっと乾かす。
この押しぶりこを何枚もつくっておき、大根、にんじんのなますにちぎって入れ、ぶりこなますにする。また、玉びろこ(のびるの根)を干しておいたものをすり鉢でつぶし、味噌を加えてよくすり、これであえる。ひろこの辛みとぶりこの味が調和して、なんともいえないよい味がする。ひろこ味噌を食べると風邪をひかないともいわれる。ねぎをきざんで入れた、ぶりこの酢味噌あえもよい。
出典:藤田秀司 他. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.41-42