からしれんこん

連載日本の食生活全集

2021年01月08日

聞き書 熊本の食事 熊本近郊の食より

れんこんは皮をむかないで両端を落とし、穴が見えるようにする。酢を落とした熱湯で五、六分、煮えすぎないようにゆでて、水にとって冷ます。水気をとるため、竹ざるに入れて二日にわたって陰干しにしておく。
からしをお茶でたて、味噌と少々の砂糖をすり鉢に入れてよくすり合わせ、からし味噌をつくる。
できあがったからし味噌を、底が平たいどんぶりに入れて、その上から、れんこんを縦にしてとんとんとたたくと、上の穴まで味噌が上がってくる。それを一晩置いておくと、余分な味噌が上のほうへ上がってくるので、それを除く。この手間を省くと、油で揚げるとき、衣がはげたりしてよくできない。
小麦粉に、そらまめの粉と、黄色いうきん粉(うこん粉)少々を入れ、水で溶いて衣をつくり、丸のままのれんこんにつけて油で揚げる。
できあがるまで大変手間がかかるため、秋祭りや正月の客料理としてつくることが多い。大きなさかん鉢(盛り鉢)にからいものつき揚げ(てんぷら)などと一緒に盛ってもてなす。
盛りつけるとき厚さ、三分くらいの輪切りにするが、この切り口が、熊本の細川藩の家紋(九曜紋)と似ていることもあって、熊本では昔からつくり継がれてきた伝統的な食べものである。

 

出典:小林研三 他. 日本の食生活全集 43巻『聞き書 熊本の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.218-219

関連書籍詳細

日本の食生活全集43『聞き書 熊本の食事』

小林研三 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540870316
発行日:1987/08
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 368頁

阿蘇は野焼きでよみがえり、萌え出る山菜や若草は人と牛の生命を育む。急流球磨川の水と豊かな米は生活の酒・焼酎を生んだ。天草の海にはさけんばかりの魚。豊かな肥後。
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