聞き書 島根の食事 隠岐の島の食より
■夏祭り(七月十六日)
氏神さまで神楽の奉納が行なわれる。この神楽は、明治二十二年に都万村柚井から久見の中本家に伝授され、それ以来毎年続けられている。一年おきに本祭りと裏祭りとが交互に行なわれる。本祭りは、ご神体を御輿に乗せて、少し離れた高い山の中腹にあるお旅所(祭りをする場所)まで練り歩き(神幸という)、そこで祭典をし、獅子舞、巫子舞を奉納する。終わるとすぐご神体は本社にもどられる。そして、夜から夜明けにかけて神楽がある。裏祭りはお旅所への神幸がなく、夜から神楽だけある。
村の人たちは、家族そろって見物に出かける。女の人はごちそうつくりに忙しい思いをする。重箱に巻きずしや赤飯、もち、煮しめ(ごぼう、干し大根、こんぶ)、こうこを詰めて、お酒も忘れないように持って行き、氏神さまで神楽を見ながら、食べながら一夜を明かす。
写真:夏祭りの神楽見物の弁当
1升どっくり(酒)、こうこ、あん入りの白もちとよもぎもち、巻きずし、煮しめ、赤飯
出典:島田成矩 他. 日本の食生活全集 32巻『聞き書 島根の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.280-283