聞き書 広島の食事 備北山地の食より
秋祭りには押しずしをつくる。押しずしは仕事の忙しいときには手がかかってできないので、年に二、三度しかつくらない。
とり入れがすみほっとしたときに秋祭りがある。松竹梅などの木の押し型に、砂糖と酢を入れたすし飯を詰める。角に切ったしめさば、さんしょうの塩漬、しゅんぎく、すしの花(鯛の赤いそぼろ)などを上に飾る。
祭りのにぎわいと、押しずしの上の赤、緑の具と酸味のあるさばがよく合う。祭りのときは仕事からも解放されて、おいしく食べる。
写真:秋祭りの押しずし
松竹梅の木の押し型(左)にすし飯を詰めて抜き、上にしめさば、さんしょう、しゅんぎく、すしの花などを飾る。
出典:神田三亀男 他. 日本の食生活全集 34巻『聞き書 広島の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.208-208