晩秋蚕と稲刈りの合い間をぬって秋祭り―晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2021年10月12日

聞き書 岐阜の食事 恵那山間(串原)の食より

たい焼きやわた菓子が楽しみな秋祭り
晩秋蚕の出荷が終わると、十月十九日は村の総氏神である中山神社の秋祭り。社は村の中央の山のいただきにある。花馬(色とりどりの紙をひらひらと張りつけた三尺くらいの竹を何本も鞍にとりつけ、飾りたてた馬)六頭と伝統の中山太鼓が奉納され、五穀豊穣と無病息災を祈願する。
素人芝居や手踊りが催され、たい焼きやわた菓子などのお店もたくさん並ぶので、弁当をつくって村中の人びとが四方から登ってくる。
秋祭りの弁当は、おこわ(赤飯)、巻きずし、いなりずし。巻きずしの芯には、ずいきや、にんじん、しいたけの煮もの、紅しょうがを入れる。いなりずしは、油揚げの中へ酢のごはんをぽんぽんに詰めこむ。
煮ものは、とれたての里芋の丸煮、出はじめたきのこの煮しめ、保存しておいたわらび、ぜんまいの煮しめなど。ちくわを使うこともある。てんぷらは、さつまいものてんぷら、にんじんやごんぼのかき揚げ。それに、ゆで卵、ごんぼとにんじんの味噌漬、きんぴらごぼう、ゆでた枝豆などをわりご(重箱のようなもの)にいっぱい詰める。からすみもつくる。

写真:秋祭り見物の弁当
左2つの重:〔上〕さつまいもてんぷら、漬物、枝豆、ゆで卵、〔下〕おこわ
中央4つの重:〔上〕里芋の丸煮、きのこの煮しめ、からすみ、きんぴらごぼう、〔中〕おこわときのこの煮しめ、白飯と里芋の丸煮と大根漬、〔下〕巻きずし、いなりずし/右:わりご弁当箱、酒

 

出典:森基子 他. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.150-151

関連書籍詳細

日本の食生活全集21『聞き書 岐阜の食事』

森基子 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540900044
発行日:1990/5
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

飛騨は山の恵み、美濃は川の恵み豊かな国。米と繭の国だが、雑穀や山菜、木の実も大切な食糧。味噌・漬物・どぶろくなど発酵食品がよく発達している。山・川の恵みを受けた八つの地区の暮らしと食を収録。
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