聞き書 山口の食事 城下町萩の食より
さばが安く買えるときにたくさん買い、保存がきくきずしをこしらえておく。日常食であり、また来客用にもすぐ間に合い、重宝する。
大きな生きのよいさばを三枚におろす。流し箱に一面、あまり多すぎず少なすぎずの量の塩をふる。流し箱の大きさは、三枚おろしのさばがちょうど納まるていどがよい。塩をふった中に、さばの皮を下にして並べる。この上にたっぷり塩をふって三時間以上、半日くらいおく。
塩でしっかり締まったさばの身を引き上げ、ざるに並べて水気をたらす。
流し箱を洗ってさばをもどし、酢をかぶるほどかけて、三〇分から一時間おく。このときにしょうがのしぼり汁をたっぷりかける。
酢の中からとり出して薄皮をはがし、腹身の骨を包丁ですきとる。このさばをだしこぶの間にはさみ、水を入れたひとまわり小さい流し箱を、この上に置いて重石にする。二、三時間から半日もおけば、上等のきずしができる。
だしこぶをはずして二分厚さに切って盛りつけ、しょうがのせん切りをつける。酒、醤油、酢を合わせて、上にかけて食べる。
きずしを姿のまま、すし飯にのせて押しずしにすると、晴れの日のごちそうになる。
写真:さばのきずし
脂ののった秋さばの味は最高。
出典:中山清次 他. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.309-309