ほろんこ市へはごちそうを持って―晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2021年10月22日

聞き書 長崎の食事 島原の食より

ほろんこ市(子馬市)
ほとんどの農家では馬を二頭飼っている。一頭は仕事用、もう一頭の大きいのは、子馬をとるための雌馬である。馬の飼料には青草、といもの茎の干したもの、あわがら、豆がら、豆の葉、稲わらなど農作物の茎や葉、それに醤油がら、豆腐かす、味噌汁の残り、茶わんの洗い水まで余すところなく利用できる。
馬が子を持てば裸麦とといもを炊いてやる。子馬は大切な収入源だから、よい子馬が生まれるよう餌に気を配る。春に生まれた子馬が乳離れする秋のはじめに子馬市が立つ。
最初の馬市が立つ島原の霊丘公園に行く日は、夜中からまんじゅうをつくり、小豆飯のおにぎり、といものつけ揚げ、煮つけ、味噌漬などを、おひつと栄重二段に詰め、酒や茶わん、てしお(小皿)もかごに入れて、女が天びん棒でかつぐ。男は、一人が子馬、一人が親馬を引いていく。親馬が一緒でないと子馬が歩かないからである。馬市に着くと番号をもらう。馬喰の前を引いて回ると、いくらと声がかかり、予想どおりなら商談成立、値段が安すぎると思ったら次の馬市にかけることになる。それから馬喰たちに酒をふるまい、顔見知りが集まって栄重を開きあう。馬には青草、稲わらなどをきざんで持っていく。

写真:ほろんこ市へ持っていく栄重
赤飯のおにぎり、ふくれまんじゅう、味噌漬、酒、つけ揚げ、煮つけ

 

出典:月川雅夫 他. 日本の食生活全集 42巻『聞き書 長崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.90-91

関連書籍詳細

日本の食生活全集42『聞き書 長崎の食事』

月川雅夫 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540850011
発行日:1985/4
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 378頁

海岸線が全国で一番長い県・長崎。離島が群れなす長崎。中国と南蛮の影響。さつまいもの料理が一番発達している長崎。さまざまな長崎のさまざまな料理の全貌を紹介する。
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