いわしをとろ箱で買い、料理を工夫する―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年02月15日

聞き書 山口の食事 長門内陸の食より

夕ごはん―麦飯、いわしのおつくり、くじらの味噌煮、漬物
この季節においしいのはいわしである。いわしは市でとろ箱ごと買うので、六人家族でも一日や二日では食べきれない。料理が一番簡単でおいしいのは、おつくり(刺身)である。しかし冬は、しごをするのがせんない(はらわたを出したり骨をとったりするのがわずらわしい)ので、たびたびはつくらない。いりつけ(煮魚)、おんぼ焼き(焼き魚)、生づけ(生ずし)など、魚の姿そのままの料理のほか、たたいてすりまぜだんごにすることもある。いわしを買うた日の夕方は、あちこちの家の台所からいわしをたたく音が威勢よく聞こえてくる。
くじらも一年中食べる。日本海でとれたものを仙崎から運んでくるので、年に三、四回買うて、白身は保存しておく。赤身はしょうが醤油をつけて刺身にするとおいしい。大根や里芋などと味噌煮にすることもある。

写真:いわしの生づけ

 

出典:中山清次 他編. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.199-200

関連書籍詳細

日本の食生活全集35『聞き書 山口の食事』

中山清次 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540890017
発行日:1989/4
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 382頁

日本海、響灘、周防灘の三つの海に囲まれる山口県は、西日本の陸海交通の要衝。維新以来、歴史を動かしてきた地の人々の暮らしの呼吸と食べものを伝える。
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