漁民の冬の食事

連載日本の食生活全集

2022年02月14日

聞き書 広島の食事 広島湾沿岸の食より

夜半から明け方にかけて仕事に出かけるときには、おかずは漬物だけでも、必ず温かいごはんをおなかに入れて出かける。また帰ったときにも、温かいごはんを食べ、熱い茶を飲むと、からだが芯から温まるような気がする。
夕―麦ごはん、地魚の煮つけ、漬物
朝や昼の食事がゆっくり食べられるような日は、一冬に何日もないが、夕飯はみんながそろっていただく。麦ごはんに、野菜の煮しめか、あじ、さば、このしろなどの煮つけか焼き魚を一品に、漬物のとり合わせが毎日の食事で、肉を食べることはほとんどない。かきやのりは「換金作物」だから、くずがきやくずのり以外は家ではほとんど食べない。しかし、生のりは桟橋や石垣などにかなり付着して生長しているから、このあたりでは、のり養殖をしていない家でも生のりを日常の食事によく使い、たまには夕食にかきと生のりの汁をつくる。
なべに水を煮たててくずがきを入れ、醤油で味をつけて、下ろしぎわに水洗いした生のりを入れる。すばらしくうまい汁である。そのほか、いりこだしに生のりだけを入れた澄まし汁や味噌汁も、なかなかおいしい。

写真:生のり汁
醤油、塩味。生のりの風味がよい。

 

出典:神田三亀男 他編. 日本の食生活全集 34巻『聞き書 広島の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.89-90

関連書籍詳細

日本の食生活全集34『聞き書 広島の食事』

神田三亀男 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540870668
発行日:1987/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 382頁

"耕して天に至る"瀬戸内の島の味の基本はひしお味噌、広島湾のかきには「いろは48種」の料理。備北山地では日本海のわにが、芸北山間では石州からの魚が食卓を飾る。
田舎の本屋で購入

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