聞き書 広島の食事 広島湾沿岸の食より
夜半から明け方にかけて仕事に出かけるときには、おかずは漬物だけでも、必ず温かいごはんをおなかに入れて出かける。また帰ったときにも、温かいごはんを食べ、熱い茶を飲むと、からだが芯から温まるような気がする。
■夕―麦ごはん、地魚の煮つけ、漬物
朝や昼の食事がゆっくり食べられるような日は、一冬に何日もないが、夕飯はみんながそろっていただく。麦ごはんに、野菜の煮しめか、あじ、さば、このしろなどの煮つけか焼き魚を一品に、漬物のとり合わせが毎日の食事で、肉を食べることはほとんどない。かきやのりは「換金作物」だから、くずがきやくずのり以外は家ではほとんど食べない。しかし、生のりは桟橋や石垣などにかなり付着して生長しているから、このあたりでは、のり養殖をしていない家でも生のりを日常の食事によく使い、たまには夕食にかきと生のりの汁をつくる。
なべに水を煮たててくずがきを入れ、醤油で味をつけて、下ろしぎわに水洗いした生のりを入れる。すばらしくうまい汁である。そのほか、いりこだしに生のりだけを入れた澄まし汁や味噌汁も、なかなかおいしい。
写真:生のり汁
醤油、塩味。生のりの風味がよい。
出典:神田三亀男 他編. 日本の食生活全集 34巻『聞き書 広島の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.89-90