聞き書 岡山の食事 中国山地の食より
■朝―白米ごはん、じご菜の味噌汁、寒漬
冬の朝は暗く寒い。とくにせき(節季=暮れの正月準備の期間)には、夜も明けぬ五時には起きて、ちゃのこ(朝食)の準備にかかる。まず、ごはんをくどの羽釜で焚きつけ、その後、いろりの火をかきおこして薪をくべ、味噌汁をつくる。いろりの火種がきれるということはない。このあたりの主食は白米ごはんである。
ごはんは、朝一度に一日の量を炊いてしまうので、昼や夕飯には、たいてい冷たいままで食べることが多い。ぬくめて食べるようなことは、ほとんどない。
味噌汁の実は、秋に囲ったじご菜やねぎなどが多いが、呉汁をすることもある。呉汁は、前の晩に水がししておいた大豆をすり鉢でよくすり、いろりの鉄なべでこしらえた味噌汁に少しずつ入れ、沸騰させないように煮て、大豆のくさみがなくなると、ねぎを散らす。寒い冬の朝の呉汁はからだがとても温まり、ごちそうである。今日も一日がんばろうという元気も自然にわいてくる。
これに漬物が添えられる。よく食卓に上る漬物は、寒漬(たくあん漬)、切り漬である。寒い冬の間は、たいていいろりで焼きながら食べる。すこし焦げめがついた漬物は香ばしくておいしい。二、三膳のおかわりはなんなくできる。外が明るくなりかけた午前六時ごろには、ちゃのこをすませ、それぞれの仕事にかかる。
写真:いろりで焼きながら食べる漬物
出典:鶴藤鹿忠 他編. 日本の食生活全集 33巻『聞き書 岡山の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.242-245