聞き書 茨城の食事 鹿島灘沿岸の食より
田植えがはじまるころ、村の代表者が集まって、そーれい(早苗植え)の日を決め、村中が一緒にする。
朝、白いもちと草もちを搗く。常日ごろ手伝いに来てくれる家や親類に、白いもちを重箱に入れて届けるので、その分まで搗くから大変である。田植え見舞いの催促のようなものである。
このお重箱は、他村に嫁いだ娘の家にも届ける。お重箱が届くと、お返しにかつお一尾とか、塩ざけ一尾が届く。
田植えの間は朝四時起きし、女衆は苗取りをしてから、ごはんのしたくにかかる。この間は、人が入るし重労働なので、四食(朝、昼、こじはん、夜)とも白米飯である。おかずは、田植え見舞いに届いた塩ざけを焼くか、かつおの煮つけ、てんぷら、野菜の煮つけなど、いろいろなごちそうを年寄りが考えてつくってくれる。
写真:田植えどきの料理
ひじきと大根の煮もの
出典:桜井武雄 他編. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.238-239